専用線も建物内では安全ではないんです
「専用線は安全」と思ってませんか。残念ながらそうでもないんです。光ファイバーであれば盗聴は難しいです。メタル回線であってもNTT局舎内はしっかり管理されています。NTT局舎内までの配線も管理が行き届いているので難しいでしょう。
しかし建物内ではメタル回線は比較的簡単に盗聴できてしまいます。
ここでは建物内での専用線や重要回線の盗聴を防ぐ為の対策例を書きます。
共用部と専用部で対策を変える
電話回線の盗聴対策は共用部と専用部に分けて対策を立てると効果的です。
共用部の構造と問題点
電話回線は図1のようにNTT局舎からテナント内に引き込まれます。
MDFにはNTTから来た電話回線が引き込まれます。
IDF(EPS)にはMDFからのケーブルとテナント内からのケーブルが集まります。
電話回線はNTT局舎内から電話機・電話交換機まで1本の線で引いている訳ではありません。NTT局舎からMDFまで、MDFーIDF間にあらかじめ配線がしてあります。この配線とNTTからの線をジャンパー線でつなぐ事で電話回線を短時間で配線できます。
IDFは1つの階の配線しかありませんが、MDFはビル全体の電話回線が集まるため大量の配線があります(写真1)。多い所ではIDFは200本、MDFは1万本はあります。そのためMDFの中に盗聴用ケーブルがあったとしても探すのは大変です。またMDFのケーブルは何年も使い続けるものが多く、無理に触ると断線してしまう場合もあります。もし電話業者に「盗聴されてると困るから、MDFとIDFを調べてよ」と言ってもまず断られます。何かあったときのリスクが高すぎるからです。
嫌な話ですが、テナントビルの場合、悪意のある会社が別の階にテナントを借り、MDFやIDFで盗聴用ケーブルを見つからない様につなぎ、自社のテナント内で盗聴データを取得・・・なんて事も可能になってしまいます。
共用部の問題と対策
問題1:ジャンパー線は盗聴しやすい
ジャンパー線とはMDFやIDFでケーブルを接続する細い線です。MDF・IDF内ではケーブルを損傷する可能性が低いため最低限の被覆だけです。その代わりに取り回しがしやすくなっています。
しかしセキュリティの面では貧弱この上ありません。
問題2:端子部分も盗聴しやすい
写真1の○部分はNTTからのケーブルの端子部分です。この部分は特に盗聴が簡単です。
対策1:「ジャンパーがけは屋内ケーブルでお願いします」と伝える
大事な回線のジャンパーがけはジャンパー線を使わず屋内ケーブルで行うと抑止・発見に役立ちます。屋内ケーブルはジャンパー線と色が違い太いので目立つからです。工事に来た方に「ジャンパーは屋内ケーブルで」と伝えて下さい。
専用部の構造
IDF(EPS)からテナント内迄は配管かOAフロアでつながっています。
テナント内は
- 露出配線
- ダクト配線
- OAフロア配線
- アンダーカーペット配線
のいずれかの方式で配線します(詳しくはこちら)。いずれも盗聴への決定的な対応方法はありませが、抑止効果のある方法はあります。
専用部の問題と対策
問題1:ケーブルの途中で盗聴される
ケーブルの途中を剥き、別のケーブルをつないで盗聴する事ができます(写真2)。OAフロアならば床下で、モールを使った配線でもモール内ですればわかりません。
対策1:あえて屋外用ケーブルを使用する
屋外用ケーブルは硬く厚みがあるため、屋内用ケーブルに比べてケーブルを剥くのが大変です。また黒いケーブルの為電話用ケーブルとわかりにくいです。
そこで屋外ケーブルを重要回線の配線に使用するのは一つの対策になります。
問題2:配管内・ダクト内で盗聴される
配管内・ダクト内では配線をつなぐ事が多くあります。これは施工上必要があって行う場合もありますが、そうでない場合もあります。
対策2:古い配線はできるだけ抜き、新しい配線を引いてもらう
配管には以前使用していた配線の残骸が残っている事があります。これは盗聴用の配線にも使えますし、配線ルートの把握をしづらくします。古い配線には配管のさびや汚れ・配管に溜まった水が長年付着し、抜けなくなる事もあります。
そこで配線の残骸をできるだけ抜き、配線の不正使用を防ぎ配管を長く使える様にする事をお勧めします。
問題3:ケーブル内の空き線で盗聴される
電話のケーブルは1本のケーブルの中に複数回線分の細いケーブルが入っています(写真3)。この空きケーブルを悪用し、重要回線の情報を盗聴する事が考えられます(写真4)。
対策3:配線には2本1対しか入ってないケーブルを使う
2本1対しか入ってないケーブルを利用すれば、空きケーブルがないですから写真3のような事はできません。
問題4:差込口で盗聴される
通常はケーブルに差込口(写真5)をつけます。この差込口の内部では別のケーブルが簡単につなぐ事ができます(写真6)。
対策4:差込口を鍵のかかる所に置く・差込口をつけない
鍵付き19インチラックのような場所に差込口を入れておきます。
またはケーブルに差込口をつけずコネクターをつけてしまいます(写真7)。こうすると別のケーブルをつなぐ事ができません。
最後に
ここまでする必要があるかというと疑問ですが、こういった場面に出会ったら疑ってみる必要があります。但し写真6は通常の電話工事で普通に行っていますので気をつけて下さい。
もしこれでも不安でしたらこちらをご覧下さい。